私は保健医療福祉や教育関係の仕事に長年従事してきました。その仕事の中で音楽療法に関係したのは、特に今まで経験したこいとのない高齢化社会が急速に進み、障害を持つ人や高齢者の方々が生きがいを持って生涯を全うすることができるような社会を創出することが緊急の課題となっていた昭和60年代でした。昭和58年に老人保健法制定され、健康手帳の交付・健康相談・健康診査・訪問指導・機能訓練事業等が市町村単位で全国的に実施されました。
「生きがい」を持つということは、人間らしく生きることであり、体や心が安定していて自己実現が図られるような環境が必要です。この楽しく意欲的になれる環境づくりのために、機能訓練事業の中に音楽やレクリエーションを使って気持ちとからだをほぐすことを取り入れたのがきっかけでした。歩行困難や言語障害等、さまざまな不自由を抱えた方々が、この事業が実施される日を楽しみにして集まってこられました。
私自身が高齢期を迎えている現在、老人ホームに入居する身になっても生きがいを持って過ごしたい、音楽が人間に及ぼす影響について基本から学び直したいと思い、MITSでご指導受けることにしたのです。MITS(ミュージックインストラクターズ養成学院)で与えられた音楽療法の基本や実践に関する様々な課題は、音楽療法を進める上でとても重要なことばかりでした。いろいろな条件を配慮し、親身になってご指導下さった先生方に感謝しております。
音楽療法士のMITS認定を受けて数か月が経過し、認知症の方々のグループホーム等で実際に活動が始まりましたが、利用者の皆さんが「音楽療法の時間」を楽しみに参加され、奇声を上げていた方が落ち着いてこられた等という介護指導員の方からの報告を受けて、私自身が励まされています。
今後も実践・学習を積み重ね、できれば学会等で研究成果も発表できるように取り組みたいと思っています。