第十九回特別養護老人ホームでの音楽療法が終了しましたので、アセスメント、プログラム、記録等ご報告させていただきます。
[アセスメント]
人数は、全員で46名になります。
今回は、入院や退所、そしてお風呂等の準備もあり4名のみが休みになりました。
誘導時に、様々な方とお話もさせていただきました。 多くの方と季節の話をさせていただき、同時に体調の確認や、発語の確認も実施しました。
アセスメントでは、女性が一名初参加と見受けられました。
始まりは、14時ちょうどになります。
[プログラム]
1.挨拶
はじまりの挨拶、季節の話を実施。
→はじまりの挨拶時に、初参加の方が徘徊をされました。すぐにセラピスト自身で止めに入り誘導をしました。「一緒に唄っていただけませんか?」と言うと、「今日はあの人が家に来るから。」と答え、こちらから「今日は歌の日ですよ。是非一緒に唄ってください!」と少しした話をすると、スタッフ様が来ていただき、一緒に再び椅子へ移動されました。(その後スタッフ様一名が隣に補助に入っていただけました。)
そして、他の方々も特に変わりもなく、話に答えていただける方も多くいらっしゃいました。
2.準備運動
呼吸法は、今回は再び“風車”を使用しました。
風車は以前4月に実施をしました。
風車はやはり見るだけで「綺麗ですね」「懐かしいね」と反応をいただけました。
呼吸としては、4月に実施した際に反省点もあった為、今回はその反省点を活かした呼吸法になりました。
しっかりと息を吹く姿や、顔を真っ赤にして回そうとされる姿、そしてリクライニング式の車椅子の方もスタッフの補助をいただき、風車を回している姿が確認できました。
その後、発声も実施しました。
発声は呼吸法にてしっかりと息を吹く姿が確認できた為、お腹をいつもより意識した発声を大声で実施しました。
しっかりと発声も確認できたところで、次のプログラムへ入りました。
3.季節の歌
『旅愁』を歌唱。歌唱前に曲の説明を少し実施し、歌唱後には質疑応答も少し付け加えました。
→歌唱前には、1番の歌詞を先に読み、その後前列の男性が2番を見る前に、思い出して2番の歌詞を教えていただけました。
そして、歌唱ではしっかりと声を出し、前を集中されてる姿も確認できました。
歌唱後には、前列で「旅愁ってそんな字を書くんですね。」と話をされる方がいらっしゃったので、皆様に質疑応答をしました。
「旅愁の愁という漢字は他にどのような読み方があるか教えてください。」と言うと、直ぐさま、「うれい」や「哀愁のしゅう」などの答えを教えていただけました。
4.手遊び歌
『夕日』を歌唱、そして同時に手遊びを実施しました。
手遊びは、
(1)グー→チョキ→パー→手拍子
(2)グーチョキパー→指を引っ張り→手拍子を実施しました。
→歌唱は、先ほどの旅愁に引き続き、楽しそうに唄われる姿が多く見れました。
そして手遊びは、しっかりと指も出すことが確認でき、唄いながら手遊びということもよくできていました。
手遊びも㈰㈪としっかりとできていた為、急遽追加として他の手遊びも実施しました。
追加の手遊びも考えながら、そして指を出して笑いながらされている姿も多く確認できました。
5.合奏
『村祭り』を歌唱、そして合奏しました。
合奏では、再びグループ分けを実施し、1番は左側のグループ、2番は中央のグループ、3番は右側のグループとさせていただきました。(事前にスタッフ様方に伝え、グループ分けの区切りも伝えました。)
→合奏では、しっかりと模造紙を見ながら鳴らし方やリズムを説明しました。
リズムは、しっかりと一致することができて綺麗な合奏になりました。
その後にグループ分けを説明し、グループ意識を持っていただきました。
1番は左側のグループのみがしっかりと鳴らしていただき、2番になると1番のグループの方が間違って鳴らす姿、そして3番になると間違って2番のグループの方が鳴らす姿と見受けられましたが、間違って鳴らした方は隣の方に注意されていたり、恥ずかしそうにされていたり、と「間違った」という意識がしっかりと確認できました。
まだまだ合奏の点では、完成とは言い難いので是非ともこれからもグループ分けを続けて合奏を実施致します。
そして、合奏の楽器回収後に少し身体を伸ばしました。
6.懐メロ
『夜来香』・『蘇州夜曲』を歌唱。
共に歌唱前に曲の説明、歌手の説明、時代の説明とさせていただき、歌唱に入りました。
2曲歌唱後には、回想を深める為、本人歌唱曲を一曲聴いていただきました。
今回の本人歌唱曲は、『支那の夜』になります。
→歌唱前の説明時には、それぞれの歌詞を見るだけで「李香蘭の歌!」や「渡辺はま子の歌!」、そして「映画の曲やね」と各々発言されていました。
終了後にスタッフ様から話を聞かせていただきましたが、「先生の説明時は、やはり皆様が急に前のめりになって話を聞いています。これは毎回懐メロのときになります。」と仰っていました。
歌唱時は、いままでの童謡曲より声が出ており盛り上がりがありました。
2曲の中でも、『蘇州夜曲』が今回は回想の決め手になりました。
蘇州夜曲の時代背景の説明を十分にした後に歌唱に入りました。歌唱では、夜来香よりも声量が上がっており、寝たきりの方も口を動かし唄われていた、とのことでした。(記録に記載)
流れで、本人歌唱曲『支那の夜』を聴いていただきました。
多くの方が、目を閉じて曲を聴かれ、自ら指揮をとり思い出して歌唱をされていました。
(その時の事も記録に記載してます。)
7.体操
『白鳥』をBGMとし、座りながら簡単な体操を実施。 クールダウンへの誘発とし、ゆっくりと身体を伸ばしました。
8.クールダウン
『夕焼け小焼け』を最後は、ピアニカの音に合わせ歌唱。クールダウンをしっかりと取り静かに終了しました。
時間は、15時ちょうどの終了になります。
[記録・反省]
・今回初参加の女性が挨拶時に、徘徊がありました。声を掛け、その後はスタッフ様の補助がありましたが、その後の話を終了後に聞かせていただくと、「はじまりの
「旅愁」以降、しっかりと集中されてその後は徘徊が全くありませんでした。スタッフも途中から離れて見ていましたが特に問題なく60分座って楽しく参加されていました。」とのことでした。
その他にも、音楽療法前に朝からスタッフに対して怒っていた女性がいらっしゃった、とお聞きしましたが、その方も集中して笑いながら参加されて終了後には笑顔で握手を求めていただけました。
・上記と似た内容ですが、普段昼になると急に寝てしまい、昼夜逆転してしまう男性の方が参加していただけました。
スタッフ様方は音楽療法中に寝てしまうのではないかと心配されていましたが、今回は60分ずっと起きて参加されていた様子でスタッフ様は非常に助かりました、とのことでした。
音楽療法の日からまた昼夜元通りに戻せるように努めます、とのことです。
懐メロ時には、様々な反応が見受けられました。
・リクライニング式の車椅子の寝たきりの女性の方が、懐メロ時に急に反応をされて声を出されていました。補助に入っていた女性曰く「蘇州夜曲と支那の夜が、特に反応がありました。」とのことでした。
・最後列の寝たきりの方も、前は見ずに上だけを見て季節の歌、手遊び、合奏と参加をされていましたが、懐メロ時は、無理をして首を起こし前の歌詞をじっと見て歌唱されていたとのことでした。
・懐メロ時の説明は、前のめりになって話を聞いている方が多くいらっしゃいました。
そして中には、目を閉じて話を聞かれる男性が説明の中でセラピストの言葉に「そうそう」「そうやった」「あぁ懐かしいな」「そうやったんやな」と手を叩いて反応されていました。
・終了後の打ち合わせでは、今回の回想は、ここ最近で一番反応が良く伝わったとのことでした。
セッション終了後も今回は多くの方が握手をしてほしいと言っていただけました。
皆様から「ありがとうね」や「また来てね」や「またファンになりました」といつもより多くの声もいただけたような気がしました。
この回想も続けれるように努めます。
【学院長より】
新しい方に、咄嗟に徘徊を止める行為は良かったですね。
他のクライアントにも安心感が生まれます
認知症の方には理解出来ないかも分かりませんが、脳のしっかりされた方には、とても優しく受け取って貰えますからね
楽しそうなのが分かります