第三十回特別養護老人ホームすばるの音楽療法が終了しましたので、アセスメント・プログラム・記録等を報告させていただきます。
[アセスメント]
人数は、40名になります。
今回は実施日にたまたまインフルエンザワクチンの予防接種日と重なってしまった為、はじめと途中、終盤と人数が少し加減してしまいました。
到着と同時に既に何名かの方が椅子を用意していただき、挨拶と拍手が鳴り響きました。
そのときに、「この前は敬老会(9月)ありがとうございます。」と話していただける方もいらっしゃいました。これは、1ヶ月前の音楽療法を覚えていただいてるということであり、終了後にもその話をしていただいた方も多くいらっしゃいました。
時間は14:00より少し早めの13:55からになります。
[プログラム]
1.挨拶
→はじまりの挨拶を実施、そして季節の話を少しだけ実施。
2.準備運動
呼吸法を実施、その後発声法を実施。
発声法は今回は「お腹から声を出す」ということを意識し、発声しました。
→発声法では、
「えいえいおー!」「わっしょい!わっしょい!」「ヤッホー!」という言葉をお腹を意識して声を出し、同時に手振りを付けながら発声しました。
最後のヤッホーでは「ここから一番近い山はどこですか?そこからやまびこが聞こえるくらいの声を出しますよ!」と事前に説明すると、非常に大きな声が出ており、しっかりとした発声法ができました。
3.季節の歌
『旅愁』を歌唱。歌唱前に曲の説明。
歌唱後には少しした質疑応答も実施。
→歌唱に関しては問題なく、アセスメント時にも書いていた人数がはじめは少なかったにも関わらずしっかりと歌唱している姿が確認できました。
歌唱後には曲の歌詞にも少し掛けて質疑応答をしました。それは、「みなさんの出身地を教えてください!」という内容です。
大阪の方!奈良県の方!と次々と聞いていき、しっかりと手を挙げていただけました。
中には四国の方!と手を挙げていただいた後列の方は手を挙げながら「高知です!」と大きな声で教えていただけました。
他にも京都・兵庫・東京と何回も手を挙げる方には他の方から笑い声も聞こえました。
質疑応答をするだけで非常に場が和み、笑い声も多く聞こえました。
4.手遊び歌
『七つの子』を歌唱。同時に手振りを実施。
手遊び内容は、
①グーチョキパー手拍子
②グー→チョキとパー→パーとチョキ→手拍子
を実施。
→歌唱は全く問題なくできていました。
そして手遊びも「できそうでできない」を意識して実施すると、
やはり歌唱は見なくてもできている方がいてましたが、どうしても手遊びが追いつかない。その追いつかないことが可笑しくなり、笑ってしまう。でもまた挑戦をして、の繰り返しになります。
今回は敢えて簡単な曲にしました。
それは手遊びを重点的にしていただく為になります。
上記に書いた通り、何度も何度も挑戦する姿は非常に効果的に見えました。
できなくても何度も挑戦して考えながら手を動かすことがしっかりとできました。
その為、結果的には成功し、そして同時に笑いも起こるような和んだ手遊びになりました。
5.合奏
『村祭り』をリズムに合わせ合奏しました。
事前に合奏の内容の説明等をして、その後練習→本番となります。
→今回の合奏の内容は、3種類のリズムパターンを入れました。
事前の説明は何度もし、合奏の練習もしっかりとできました。
本番でも3種類のパターンもしっかりと使い分け、説明のすり込みで覚えていただけました。
今回の3種類のリズムパターンは初でしたが、ここではもうそれも簡単になってしまっているかもしれませんでした。
6.懐メロ
『蘇州夜曲』を歌唱。その後次の曲の時代を振り替える為、昭和13年の時代背景を説明。そして最後に『旅の夜風』を歌唱しました。
→今回は前回の反省も踏まえ、「戦前の映画に関する曲」ということを取り上げて選曲しました。
先ずは『蘇州夜曲』、「支那の夜」の映画に関連して説明をはじめました。
映画に関する質問をすると、「山口淑子出とったよね?」と教えていただける方もいらっしゃいました。どんどん回想して関連した質問も様々な方が答えていただけました。
やはり蘇州夜曲は人気のある曲で、ここでは前で見る限り歌唱をしている姿はほぼ全員にまで達していました。
次に、昭和13年の出来事・流行等を振り返り回想していただきました。
はじめ、「昭和13年が80年前です。」と説明したときに、「80年前!そんなん覚えてない!昨日の晩ごはんも忘れてるのに覚えてないわ!」と笑いながら話をされていた方がいらっしゃいました。
そこで昭和13年の話の中でその方に(もちろん他の方々にも)質問をしました。
「昭和13年にある新横綱が全勝優勝されました。それは一体誰でしたか?」と聞くと、「戦前はやっぱり強かったのは双葉山やな!双葉山は強いだけじゃなくて男前やった!」と饒舌に話をされてしっかりと回想ができていました。
他にも「当時はブロマイドが非常によく売られていました。その中で○○さん(女優)の売れ行きがよかったみたいなのですが、○○さんはべっぴんさんでしたか?」といろいろな方に聞くと「あの人はべっぴんさんと言うより上品な方やね。」や「可愛らしい人やったよね」と教えていただける方も。中には「まぁまぁやね。」と正直に答える方もいらっしゃいました。
他の女優さん俳優さんの名前を出した時は「そりゃべっぴんさん!」「男前やった!」と答えもすぐに帰ってきてしっかりと当時の女優さん俳優さんの顔が頭の中にしっかりと蘇り回想もできていました。
その中で「昭和13年、ある映画が公開されました。その映画は看護婦さんとお医者さんの…」と説明をする中、急に中列の方が手を挙げて「愛染かつら」と答えていただけました。
他の方々も隣同士などで「愛染かつら」という答えはでていました。
だんだんと皆様が気付かれたときに模造紙をめくり『旅の夜風』を歌唱していただきました。
こちらもやはり人気曲でした。
今回は回想に非常に適しており、発言や隣同士の相互での振り返り話などが良好でした。
7.クールダウン
『白鳥』をBGMとし、簡単な体操を少しだけ実施。その後、『夕焼け小焼け』を静かに力を抜きながら歌唱、静かなまま軽い挨拶をし終了しました。
終了は、15時ちょうどになります。
[記録・反省等]
・前回の敬老会のことを覚えていただいてた方が多くいらっしゃったのは少し衝撃もあり感激もありました。
前回の報告時に、「クライアント様方が少し緊張した雰囲気だった」と書かせてもらいましたが、今回の実施ではそんな様子は一切感じることなく、何より今回のプログラムでは「笑い」と「回想」が非常によく入り混じった内容で熟すことができたことに嬉しく思えました。
質疑応答での答えはもちろん、セラピストが発した一言で隣同士の方が会話を弾ませる。
その繰り返しで回想がどんどん増していき効果的になりました。
・懐メロ時にも、プログラムの欄で書かせていただいた方が非常に良い例になりました。
「80年前のことは忘れた。」と本人が言いながらも「双葉山!男前!」と次々と情報が頭の中で蘇りそれを言葉に出す。そして『旅の夜風』を誰よりも大きな声で自ら指揮を取りながら唄われる姿は非常に印象的でもあり、効果的にも見れました。
・ただ上記2点のことは、「これからも続けないといけない」という非常に難しい問題も生まれます。
これはやはりスタッフ様と連携し、アセスメント・振り返りをしっかりとする、ということにもなります。これは三十回ということで改めて実感させられました。