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2016.12.31
特集

音楽療法士〜資格取得後の奮闘記 第九回「本人の歌声」

第九回の音楽療法が終了しましたので、アセスメント・プログラム・記録等のご報告させていただきます。

アセスメント

人数は今回は43名になります。明日が祝日ということで、今日にお風呂を入られる方が多くいらっしゃるということなのでいつもより人数は少なくなります。お風呂が終わった順番で途中から参加される方もいらっしゃいました。そのため、開始時間も普段より5分早い13時55分のはじまりになります。セッション前に座られていた方と話をさせていただくと、車椅子の横にタンバリンを持っていらっしゃいました。話を聞くと、音楽療法の日が待ち遠しくて、中でも合奏が好きとのことで、普段から合奏のプログラムのために職員と練習をしているとのことでした。

プログラム

1.あいさつ:はじまりの挨拶。季節の話。奈良の気候、季節の話をしました。

2.準備運動:丹田呼吸法を実施し、その後、発声法をしました。
→今回の発声法は前々回実施のモノマネ(ゲゲゲの鬼太郎)をしました。覚えてる方もいらっしゃり、スタッフの方によると、大分とモノマネが上手になり裏声がきれいに出ています。とのことでした。

3.季節の歌:『旅愁』を歌唱。その後、秋の童謡曲を歌詞なしで思い出し2曲歌唱。今回の2曲は「赤とんぼ」と「紅葉」になります。
→歌唱はよくできていました。声もよく出ており、歌になると急に顔を上げる方も多くいらっしゃいました。(歌詞無しで思い出す)2曲は、赤とんぼは、こちらで誘導をして4番まで歌唱しました。紅葉は、1番まで歌唱しました。はじめに「秋というとどういったことを思い出しますか?」や「秋の風物詩は?食べ物は?」などの少しした会話も入れ、曲へと誘導しました。ちなみに、答える方も毎回答える方に寄らないように、こちらで指名をして単語を答えていただきました。難しい方は、「はい」か「いいえ」かで答えれるように誘導しました。(例:秋刀魚は秋ですか? 梨は秋ですか?)

4.手遊び歌:『どんぐりころころ』を歌唱し、同時に手遊びを実施。
手遊び内容は、
①グーチョキパー→手拍子
②パーチョキグー→手拍子
になります。
→”唄いながらの手遊び”は簡単でした。なるべく全体的にできるように、難しい方や寝たきりの方には、スタッフの介助をお願いしました。そして当初考えていた内容だと、クライアント様方は簡単だった様子なので、せっかく指を動かしたということもあり、急遽追加で手遊びを足しました。グーチョキパーができたので、次は1(の指)→2→3→手拍子、5→4→3→手拍子と同じように実施しました。これもゆっくりと音楽に合わせての実施でも大丈夫でした。

5.合奏:『証城寺の狸囃子』を歌唱し、同時に合奏を実施。
合奏内容は事前に説明、練習しました。軽く練習もできたところで、本番では、”唄いながらの合奏”をしました。
→合奏はとても切れよく鳴らせました。止めるところや振る叩く等の動作も練習通りにできていました。同時に唄うことも楽器に負けないように声を出せる方も多くいらっしゃいました。アセスメントのときに話した女性にも一緒に合図をして鳴らすこともできたので、今回は少し長めの合奏にしました。同時に楽器の切れもよかったので、合奏後は、3・3・7拍子を実施。そして最後は一本締めをし、気を集中してもらいました。

6.懐メロ:『お富さん』と『悲しき口笛』を実施。そして今回は、美空ひばりの曲を実施したため、当時の本人の歌声のCDを用意しました。
→『お富さん』はどちらかというと男性の方に人気の様子でした。よく答えていただく男性の方に、「春日八郎の曲や!他にもどんな曲があった?」と聞かれたので、全員にわかるように「赤いランプの……」と言うと、全員が「終列車!!」と答えていただけたり、「別れの……」と言うと、「一本杉!!」と同じように全員に答えていただけました。『悲しき口笛』は歌詞を見た瞬間に周り同士で「美空ひばりの曲やね」と会話していただける場面が多数見れました。歌唱後に、「映画に出ていた美空ひばりさんの格好はどのような格好でしたか?」と聞くと、「燕尾服にシルクハットとステッキを持ってたかな?」と後列の方が大声で答えていただけました。(普段あまり答えない女性の方でした。)そして、その後、美空ひばりさんに関することを説明を少しさせていただき、回想をするために、当時の歌声入りの曲(『越後獅子の唄』)を聴いていただきました。(前回、学院長からのご指摘により、回想を全員ができるために、初実施しました。)

曲を聴いていただくと、各々で口ずさむ方がいらっしゃったり、ハミングされる方、目を急に閉じてリズムを取る方、隣同士で話をされる方、と多数の方が回想されていました。曲を聴いていただき、CDを止めるとすぐに「越後獅子の唄!」と答える方が多数いらっしゃいました。中には、「何歳頃に歌ってたのかな?」という方もいらっしゃったので、越後獅子の唄の説明もさせていただきました。今回は、スタッフの方に相談もし、「美空ひばりさんは利用者さん全員が好きですよ」と言っていただけたので、美空ひばりさんの曲を聴いていただきました。前回、学院長からのご指摘をいただいた、「懐メロ3曲がいいのでは?」ということだったので、3曲考えていたのですが、第1回、第2回とはじめの頃に懐メロ3曲を実施したときには”歌い疲れがかなり見れた”とスタッフの方にも指摘をいただいたので、3曲目は聴いていただくという形を取らせていただきました。

7.体操:座りながら利用者様と一緒の目線になり、簡単な体操を実施。クールダウンへの誘導。
→体操は全体的に参加もよく見れました。スタッフの方によるとここでの体操も「毎回、静かに全員が体操に参加している姿は珍しい。」とのことです。
クールダウンへの誘導はできました。

8.クールダウン:『夕焼け小焼け』を最後は目を閉じ静かに歌唱し、クールダウンを取れた段階で静かに終了しました。時間は、13時55分はじまりの、14時55分の1時間プログラムになります。

記録・反省

スタッフの方に手伝っていただき、どういった変化が見れたか聞いてみたので、以下書かせていただきます。
・スタッフの方によると、手遊びは当初より利用者様には、はるかに簡単になっているとのことです。「1年前のときは、ただただ動かしているように見えたが、最近では、指の出し方も簡単で、唄いながらの手遊びもよくできている。」と言っていただきました。もう少し難易度を上げてもいいかと思えました。
・合奏は、全体的に楽しみにされている方が多いとのことで、普段のレクレーションのときにも手を叩いて音頭を取る方が昔より増えた、とのことでした。
・回想のための懐メロは、やはり一番人気とのことでした。寝たきりの方が、口ずさむ場面は音楽療法の日で特に懐メロのときだと間違いないと言っていただけました。
以上スタッフ様に聞いた効果、変化になります。
・自分としては、反省点として今回初実施の”本人の歌声入りの曲”を取り入れたときに、「全員が回想する」ということがまだまだできていないと思えました。多人数のため、一人一人思い出の曲が違うこともあるので、まだまだ模索して寄り添えるような回想ができればと思いました。(これからの課題でもありました。スタッフとの協力で徐々に気をつけます。)

学院長より

お疲れ様でした。とても良いセッションが出来ましたね。呼吸法は、高齢者には丹田呼吸は危ないと最近施設側から言われました。勿論、お腹に力を入れることは難しいので、丹田を意識することしか出来ませんが、止めてはいけない事に成りました。それより、吐いてから直ぐに吸って頂き、口笛の口をして少しずつ時間をかけて吐いて行く呼吸法が良いですよ。「長生きしたけりゃ、長息しましょ」は広島のセッションで言いましたね?人数が多いので、ラップの芯でお風呂やかまどの火をおこす呼吸や、風車、紙風船にストローを差して膨らませたりは出来ないかも分かりませんが、楽しい呼吸法のアイデア等も楽しいですよ。秋の質問で、風物詩、等、分かりにくい表現はやめましょう。食べ物は?は良いですが、行事は?とか、秋に色が変わる木は?とか答えやすいと思います。