第三十六回特別養護老人ホームすばるの音楽療法が終了しましたので、アセスメント・プログラム・記録等を報告させていただきます。
[アセスメント]
今回参加いただいた人数は、34名になります。
アセスメントをスタッフ様にお聞きすると、現在ターミナルケアの方が4名いらっしゃり、その方々が部屋にて過ごされてるとのことでした。
基本的にはいつも参加いただいてる方々が多く、そのうち音楽療法の為にショートで来られてる方もいらっしゃいます。
初参加となる方もおらず、とのことでした。
開始時間は14時からになります。
[プログラム]
1.挨拶
はじまりの挨拶にて、季節の話、時候の話、などをし、見当識をしました。
外の天気は晴れていましたが、6月という説明とともに皆様には「梅雨の時期」という認識を取っていただきました。
模造紙の表紙にはそれに関連する絵を描いており(アジサイ、かたつむりなど)、皆様にも見ていただきました。
2.準備運動
・呼吸法・発声法を実施。
今回、発声法にて口を動かすこと、そして大きな声を出す目的として実施しました。
→発声法は、模造紙の表紙に書いている絵を見ていただき、「これはなんですか?」と質問すると、「でんでん虫!」「かたつむり!」と答えていただけました。
それに合わせ、「でんでん虫の曲は皆様覚えていますか?」と聞くと、「でんでんむしむしかたつむり〜♪」と答えていただけました。
そして今回はそれに伴い、発声にて口をしっかりと動かして「かたつむり」を唄う、という内容を発声とさせていただきました。
そして大きな声を出すために、手拍子を取りながら手を叩く音に負けないように声を出していただきました。
発声としては非常によく声が出ており、皆様は大きな声も出されていました。
(なるべく変化を出すために、いろいろな発声を現在模索してもいます。)
3.季節の歌
『雨降りお月』を歌唱。
同時に曲の説明をし、皆様に質疑応答もしました。
→
曲の説明に関しては、皆様が食い気味に聞いていただけました。説明するときに限って皆様が集中されて聞いていただけるのは音楽療法の一つの楽しみ、とも言っていただけてます。
途中で、「「からかさ」とはなんですか?」と聞くと「傘のことやね。」と多くの方が教えていただけました。中には前回と同じく身振り手振りで教えていただけたりもしました。
歌唱自体は特に問題もなく、メロディーの違う2番もしっかりと唄えていました。
そして、歌唱後には「雨に関する話」を少ししました。「先程はかたつむりを話しましたが、雨に関連した曲は日本には非常に多いですね。」というと、どこからか「あめあめふれふれ〜♪」という歌声が聞こえ、それにつられて他の方が一緒に歌い始めました。
その為、急遽「あめふり」の歌唱に入りました。先程と同じで手拍子を取りながら歌唱していただきました。
3番あたりから「ふんふんふん〜♪」と鼻歌になってきており遂には4番から唄わなくなるということが起き、それに対して皆様が大きく笑っていただけました。
このことは、先月のプログラムでも起きており、いい方向で考えると「関連した曲が見当識とともに出ている。」とも考えれました。
4.手遊び歌
『てるてる坊主』を歌唱。同時に手遊びを実施。手遊び内容は、
①グー→手拍子→チョキ→手拍子パー→手拍子
②ランダムで出す
という少しいつもと違う内容に挑みました。
→歌唱、説明とし、その後に手遊びに入りました。
そのときに前列の方々が「最近てるてる坊主なんて見ないね。作ってるのかな?」という声が聞こえ、それに対して隣の方が「昔はよく作ったりとかしたけどね。」とも答えられてました。
手遊びでは、
①は非常によくできており、間違える方はほとんどいらっしゃりませんでした。
②は説明をし、その後に一度練習をしました。
例えば、
手拍子→グー、手拍子→チョキ、手拍子→パー
手拍子→親指、手拍子→小指、手拍子→グーとパー、手拍子→チョキとグー、手拍子→オッケーサイン
などの幅広い内容にて練習をしました。
ゆっくりとしていった為、皆様にしっかりとついていただけてました。
そして本番として、2番まで歌唱しながら実施しました。
結果で言うと、かなり難しい様子だったと思えますが、ほとんどの方が一生懸命ついてきてもらえてました。
そして他の辞めた方に関しては、ずっと笑われており手拍子だけ参加しながら笑いながら歌われているのが印象的でした。
今回はいつもと違う内容でさせていただき、いつもの決まった内容ではなく、咄嗟の瞬発力を鍛え、模倣していただく、という目的も加えました。皆様はしっかりと考えてる様子も見れ、咄嗟に出す姿も非常に効果が伺えました。
5.合奏
『汽車ポッポ』を合奏しました。
本日は楽器を統一し、鳴子を一人ひとつ持っていただき実施しました。
合奏内容は模造紙に書いておりそれに合わせての実施になります。
→
今回は鳴子に統一しましたが、なるべく鳴子でも統一性のある音ではなく、違うメーカーの鳴子などを使用しました。
この曲は非常に長いため、先ずは歌から紹介しました。アカペラにて一番を唄い皆様に思い出していただきました。
そこから合奏内容の説明。合奏ではテンポよく鳴らす箇所、ゆっくりと鳴らす箇所、振る箇所と分けながら実施。
本番では、少し長いものの合奏のテンポがキープ出来ていました。それに伴いバラバラの音色が聞こえているため綺麗な合奏内容にもなりました。
今回は曲の長さと、合奏の手への負担を考えあまり長くはしませんでした。
盛り上がりはあったものの短い時間の合奏になりました。
6.懐メロ
先ず、昭和25年についての振り返りをし回想を深めていただきました。次に昭和25年の流行歌『桑港のチャイナタウン』を歌唱。その後、今回は昭和25年の流行歌のイントロクイズ等を実施しました。
→
先ず昭和25年の回想を模造紙にて実施。
中には質問形式にし、
「谷崎潤一郎が書いた本の名前は?」
「マーガレットミッチェルの本「風とともに??」」
「千円札の発行、肖像は?」
などを皆様からお聞きしました。
わからないという答えもある中、小さな声で答えていただける方が多くいらっしゃりました。
そして回想を深めていただいた後に、
流行歌「??」渡辺はま子
と表記して、皆様に考えていただき、その後曲の模造紙に入りました。
曲の名前『桑港のチャイナタウン』を見ると「あぁ!」という声が聞こえ、その後曲の説明、そして歌唱に入りました。
歌唱に関しては問題なく手拍子を取りながら唄われる方が多い印象がありました。
その後、今回は昭和25年の流行歌にてイントロクイズを初めて実施しました。
模造紙に曲の名前と歌手を書き、以下のようになります。
「???」美空ひばり
「越後獅子の唄」美空ひばり
「???」山口淑子、李香蘭
「熊祭の夜」伊藤久男
「???」岡本敦郎
「買物ブギ」???
1つずつ曲を聴いていただき、(時間のことを考え1番までになります。)その後曲の名前を思い出していただきました。
先ず、一つ目のクイズは「東京キッド」になります。曲を掛けると殆どの方が思い出せていました。空で歌詞を思い出し唄われる方も多く回想していました。歌詞の中に東京キッドと出ている為、唄いながら先生の方を見ながら「東京キッド!」と答えてもいただけましま。
次に、越後獅子の唄を説明すると、これも先ほどの東京キッドに刺激されてか、歌詞を空で思い出して唄われる方が多く見れました。
そして次のクイズで答えは「夜来香」になります。そのときに、ヒントとして歌詞の始まりだけ皆様に出しました。
曲を掛けるとこれもまた思い出される方が多く見れましたが、先ほどと違うのは、「夜来香」は思い出して唄う方よりしっかりと耳を澄まして聴かれる方の方が多くいらっしゃりました。
これも先ほどと同じく歌詞の一部に答えが入っている為聴きながらも答えを言っていただけました。
そして次の問題「白い花の咲く頃」岡本敦郎を聴いていただきましたが、こちらは男性の方が反応が良く見れました。男性の方が思い出しながらもまた唄われる姿や、口を動かさず目を閉じて指揮を取りながら聴く姿と、男性の人気の強い曲の印象が見れました。
そして最後の問題で、「「買物ブギ」を唄っていた歌手を思い出してください!」と言い、曲を掛けました。
速いテンポの曲ですが、皆様が知っている歌詞の一部をしっかりと口を動かして歌唱されていました。
中でも特徴的な「わてほんまにかなわんわ」という関西弁の歌詞はほとんどの方が揃えて唄われていました。
曲を聴くのに合わせて笑われる方がいらっしゃったりと関西弁ならではの言い回しが回想の手助けにもなり効果的でした。
今回のイントロクイズは以上になります。
まだ試験的になってしまいましたが、曲の特性からこちらが勉強になる部分が多い内容になりました。
7.クールダウン
一度身体を伸ばして深呼吸をし、その後「夕焼け小焼け」を歌唱し、クールダウンを取る。その後は静かに終了しました。
時間はちょうど1時間の内容になりました。
[記録・反省等]
・今回は前回に引き続き、プログラムの変化をつける為に懐メロの内容を変えました。
その中でも「イントロクイズ」が初めてにあたります。
内容としては、皆様の反応が見れたのが勉強になったという印象の一方、
「時代がもう少し前の内容でも良かったのでは?」
という反省点も残りました。
いつも一曲聴く内容を今回は多くの曲を取り入れたのは、皆様にとっても非常に満足していただけた内容で隣同士の会話も観ることができました。 ですがそこから情報を引き出すという部分までには至らず、改めて考えるともう少し前の戦後すぐの時代、もしくは戦前の時代の方が引き出せたかと思えます。
プログラム的には、個人の反応を見れる為非常に良い内容になっており、スタッフ様からも高評価でした。
なので、次回同じイントロクイズをする時は時代を考えて再度挑戦したいと思います。
前回、今回となるべく変化をつけた懐メロプログラムを用意推敲し、実施したいと思います。
・そして、新たにスタッフ様から聞いた情報では、手遊びが非常に良い効果を生んでいるとのことでした。
いつも実施している手遊びを、入居者様方が自分で実施をしている、とのことです。
いつもレクレーションを終えた後の時間のおやつの前に4、5名の方が全員で話をしながら音楽療法で実施した手遊びを復習されて遊ばれているとの情報をお聞きしました。
スタッフ様が本人様に「それこの前音楽療法の先生がやっていた内容ですよね?」と聞くと「これ難しくてできんのよ。」と談笑しながら普段でもされているとのことでした。
音楽療法の時間だけでなく、普段から楽しまれてる姿は良い効果を生んでいると言うことで、スタッフ様から情報をいただきました。